プロジェクトの発足にあたり

障害者の雇用環境が変化する中で、発達障害のある人の真面目さ、集中して仕事に取り組むところなどが注目され、関心を持つ企業が増えています。
しかしながら、自身の仕事の適正(マッチング)、職場定着(職場でのコミュニケーションや上司や周囲の理解)、キャリアアップ、仕事と生活のバランスなど、長期的に就業していくためには様々な課題があります。
平成30年4月より、障害者雇用率の見直しがあり、法定雇用率の引き上げが想定されています。
今後さらに障害者雇用枠の求人が増え、雇用が進むことが予測されており、今後は就職が目標であった時代から、よりよい働き方や安心して働くことのできる環境が求められています。
そこで、就労を目指す発達障害のある人がひとりでも多く、自分に合った仕事に就き、活躍できる環境整備を目的にプロジェクトを立ち上げることになりました。最終的には、キャリアアッププランとしてプログラムを構築し、実践していく予定です。

就労環境の変化により発達障害のある人にとって働きづらい社会に

かつての農業などの一次産業が隆盛だったころ、また企業の情報化がそれほど整備されていない時代には発達障害のある人

サービス業などの三次産業が主流となる中で、コミュニケーションの苦手

また、働く職場には、女性(育児者)、シニア、外国人、障害のある人、難病患者、がん患者といった人材が、雇用形態も正社員、契約社員、嘱託社員、出向社員、派遣社員、外部委託と多様化の波が押し寄せています。

~変化要因~
バブル崩壊後の日本経済の失速
グローバリゼーションの影響
日本企業の採用行動・雇用戦略の転換
政府の労働力政策の転換

発達障害のある人の特性

~やりたいことへの拘り~

専門職志向
正規採用が難しい職業
対人援助が必要な業務
趣味=仕事

~やりたいことがわからない~

業種、職種等についての情報不足
自分の適性がわからない
一般常識とのズレ

~「自分のことがよくわからない」ままでの自立の難しさ~

自信につながるような「自分らしさ」がとらえられない。
自分の中に認められるものを見出す。
この自分でやっていける感じを取り戻す。
知っていることと、わかって出来ることを混同(ゆとり世代との共通点)

継続的なキャリア形成のための環境整備

発達障害は10年前に支援法が制定され今年の5月の改正で、就労と教育支援を強化することなどが柱で子どもから高齢者までどのライフステージでも切れ目のない支援を目指すことが重点施策としてうたわれています。発達障害のことがメディアなどで取り上げられるようになり、大人になってから診断されるケースも増えています。

発達障害のある人は突発的な問題の対応や関係性の構築が苦手であるため、ライフステージにおける(本人や家族要因による)生活課題への対処を想定しておく必要があります。

壮年期、老年期での代表的な生活課題として親の介護の問題がありますが、地域との関係性(つながり)が少ない場合、介護のための地域資源に届かない、介護ヘルパーやケアマネとのコミュニケーションがうまくいかず介護保険をうまく利用できない、また、親の死後も社会支援の申請ができないというケースも想定されます。

老年期ではなく壮年期の段階で、住んでいる地域の介護や生活を支えるために必要な資源(フォーマル・インフォーマル)を調べておくことが必要だと思います。これらの問題を共有できる場はまだまだ少ないのが実情です。

プロジェクトの背景

  • 現状の障害者雇用枠での就業に満足していない
  • キャリアアップを望んでいるが、方法がわからない
  • 提供される仕事が簡単であったり定型のものが多い(モチベーションを持てない)
  • 将来的な不安を抱えるケースが増えている
  • 雇い主側が能力を活かしきれていない、どう対処していいかわからない

セオリーオブチェンジ

発達障害のある人にとって「キャリア形成」の機会が当たり前に提供される社会の実現

社会のアウトカム

一億総活躍社会の実現
障害者に対する意識の変化
社会保障費の軽減

企業のアウトカム

多様な人材の活躍の場の提供(ダイバシティの推進)
障害者雇用のノウハウの獲得、マニュアル等支援ツールの充実
企業社員の社会貢献意識の高まり

※本プロジェクトは、つむぐびとプロジェクトのひとつとして実施しています。